エンドトキシン測定と生菌数試験

ダイアライザの性能はβ2マイクログロブリンのクリアランスで
Ⅰ型、Ⅱ型に機能分類されています。
β2ミクログロブリンクリアランスが70mL/min 未満がⅠ型、以上がⅡ型です。

クリアランスとはダイアライザに流入した血液のうち、
どのくらいの血液が完全にきれいになったかを表す

β2マイクログロブリンのクリアランスの高い高性能膜のことをHigh flux膜ともいい、
膜のポア(穴)は大きく、透析合併症の原因となる
β2マイクログロブリンの除去をターゲットとしています。
透析を受けている人の95%以上がHigh flux膜を使用しています。

ダイアライザⅠ型、Ⅱ型はそれぞれ a型、b型に分類されます。
β2マイクログロブリン(中分子)を除去し、
体に必要なアルブミン(大分子領域)を除去しないものをa型、
アルブミンのような大分子領域まで除去しようというのが b型です。
a型、b型はアルブミンのふるい係数0.03未満と以上で区別されます。

ダイアライザの機能区分にはその他、「特別な機能」をもったS型があります。

アルブミンは有用な物質なので除去したくない。
しかしβ2は除去したい「シャープ」なダイアライザ
性能の良いダイアライザであるとされましたが
今ではちゃんと食事がとれている患者さんには
アルブミンまで除去する「ブロード」なダイアライザが用いられています。

蛋白質に何らかの尿毒症物質がくっついているという考えです。
蛋白結合型尿毒素にはインドキシル硫酸やホモシステインが挙げられます。

透析膜のポアが大きいと、
血液側から透析液側への物質の除去効率は良くなりますが、
透析液側から血液側への移動も起こりやすくなります。
この水の移動を逆濾過、物質の場合、逆拡散といいます。

除水は透析液に陰圧をかけ除水を行いますが、
血液はポンプにより循環しているため陽圧がかかります。
この圧力の和をTMP(膜間圧力差)といいます。

この圧力(TMP)はダイアライザー全体に均一ではなく、
血液入り口側は血液側の圧力が高く、圧力損失を生じ、出口側では血液側圧力は低下します。
そのため、意図する、しないにかかわらず、透析液側から血液側への水の移動が起きています。
これを逆濾過といい、利点と欠点があります。

逆ろ過
        
透析膜表面のポアは小さいため細菌を通しませんが
細菌のフラグメント(断片)はここを通過します。
細菌の断片はエンドトキシンと呼ばれ、
発熱、炎症を起こす毒性をもち、体にダメージを与えます。

合成高分子膜は再生セルロース膜に比べ、
生体適合性が高いというのは透析技術認定士試験によく出題されます。
しかし、どの種類の膜が各患者さんにとって適合性がよいかというと
人それぞれです。生体適合性がよいといわれる合成高分子膜を使用し、
透析中にショック症状を起こし、透析を中断しなければならない患者さんもいます。

MIA症候群とは

腎不全となると尿毒素物質が体に蓄積します。
さらにダイアライザという異物に血液は透析毎に接触し、
ポンプで血球は傷つき、透析液から細菌のフラグメント(断片)が
体に流入するという慢性的な炎症状態にあります。

炎症はエネルギーを消費します。動脈硬化をまねきます。
透析患者さんのさまざまな合併症を進展させる要因のひとつです。
透析によって体に必要な栄養物質は奪われ、
リン、カリウムを抑えるため食事制限もしなければなりません。
         
慢性炎症( Inflammation)栄養不良(Malnutrition)動脈硬化(Atherosclerosis)
それぞれの頭文字をとってMIA症候群といいます。

MIA症候群とは、炎症が透析患者の生活の質を悪化させる
多くの合併症を引き起こしていることを捉える概念です。

MIA症候群

清浄化された透析液を使うことで透析合併症の発症を遅らせることができます。
透析液の汚染は生体適合性を損なう最大で予防可能な要因のひとつです。

透析液はRO装置で処理された透析用水でつくります。
RO装置は高価です。以前は水道水を直接使用する施設もありました。
水道水にはエンドトキシンの他、アルミニウムが含まれており、
これが骨軟化症、アルミニウム脳症の原因となることから
昭和63(1988)年に初めて透析液の清浄化に関して保険診療点数がつきました。

これは「RO装置、活性炭により、アルミニウム、エンドトキシン等の
除去する目的で水処理を行った施設は30点加算する」というものです。
この点数はその後廃止されますが、透析施設でのRO装置の普及が進みました。

平成22(2010)年、「透析液水質確保加算」がつきました。
「透析液の水質管理について人工腎臓における合併症防止の観念から
使用する透析液についてより厳しい水質基準が求められる。」
こうした基準を満たした透析液を使用している施設に対しお金がおりるものです。

条件として

1)月一回以上水質検査を実施し、関連学会の定める「透析液水質基準」を
満たした透析液を常に使用していること。

2)専任の透析液安全管理者1名(医師または臨床工学技士)を
配置していること

3)透析機器安全管理委員会を設置していること

が挙げられています。

関連学会の定める透析液水質基準とは
日本透析医学会の「透析液水質基準と血液浄化器性能強化基準」を指します。
生物学的汚染基準を以下のように定めています。

・ 透析用水 細菌数100CFU/ml、ET0.050EU/ml未満
・ 標準透析液 細菌数100CFU/ml、ET0.050EU/ml未満
・ 超純化透析液 細菌数0.1CFU/ml、ET0.001EU/ml未満(測定感度未満)

海外で生菌数試験、日本ではエンドトキシンの測定が水質検査の主流であったのは
海外ではエンドトキシン30EU/L未満が検出感度以下になるのに対し
日本では1U/Lでも定量できる点、
透析液にはグラム陰性菌が優勢で陽性菌の検出率が低い点、
陽性菌の生体に与える影響が小さいと考えられている点、
(陽性菌のETは陰性菌の10万分の1)
生菌数試験が目視で数える、VNCの問題があるなど結果があいまいな点が挙げられます。

VNCとはviable but non-culturable、生きてるけれど培養できない菌のことです。
消毒で弱っているからかもしれませんし、
培地がその菌にとってふさわしくないなどの理由でコロニーを形成しません。
微生物の多くが人工的に培養できないと言われています。

日本薬局方では生菌数試験について
「本試験は好気的状況下にて増殖しうる中温性の細菌及び真菌を
測定する試験である。本試験では低温菌、高温菌、高塩菌、嫌気性菌、
特殊な成分を増殖に要求する菌などは、
大量に存在してても陰性になることがある」とあります。
このことを理解していれば生菌数試験を細菌検査などと言い間違えたりはしません。

エンドトキシンの値と生菌数試験の結果は相関しないのです。
エンドトキシン値と生菌数を同時に評価することで
菌の存在から今後の汚染拡大を防止する、
生菌試験の煩雑で即時性のなさ(7日もかかる)を補う意味があります。

菌はでかすぎて透析膜を通過できません。
しかし菌の破片、死骸である菌体成分は透析膜から血液に接触し、体に悪影響を与えます。
現在の水質基準はエンドトキシン、生菌数で判定されますが
グラム陰性菌のエンドトキシン、陰性菌、陽性菌の細胞膜構成成分ペプチドグルカン、
陽性菌のリポタイコ酸、抗酸菌のリポアラビノマンナン、真菌のβグルカンなど
今後はこれらの菌体成分が水質検査の主流になるかもしれません。