C型肝炎

透析患者のC型肝炎ウイルス感染者は16%から22%と報告されています。
貧血治療薬エリスロポエチンが開発される以前には現在よりも輸血が頻回に行われており、
輸血後感染症にかかる人が多かったのです。現在では検査技術も進歩し、
輸血後のC型肝炎ウイルス感染は17万人に1人にまで低下しました。(1998年)

2001年の透析患者のC型肝炎ウイルス陽転化率は2.2%/年であり、
一年間に透析患者の2.2%がC型肝炎ウイルスに感染していることがわかりました。
透析患者は日常的にC型肝炎に感染していたことがわかります。
注意しなければならない感染症です。

C型肝炎ウイルスは1989年に発見されました。
ウイルス性肝炎の中でC型肝炎は80%を占め、日本では約200万人の感染者がいます。
1980年代なかばまで輸血後のC型肝炎陽性率は15%と高率であったため
造血剤の発売される前から透析を行っている患者さんは輸血の機会が多く、
もともとC型肝炎陽性率が高かったのです。

輸血のほか集団接種の注射の回し打ち、刺青、汚染血液が血液中に入ることで感染します。
性行為、母子間での感染確率は低く、透析室では抗凝固剤の分注作業、
薬剤の作成、薬剤や生食の使いまわし、
汚染された製剤が何らかの原因で他の患者さんに使われた、
血液の飛沫によるもの、等が考えられえます。
C型肝炎の感染形態は3つです。

・ 治癒 
感染後、急性肝炎をへて、治ってしまったもの。
感染しても30%ほどが治癒します。 体内にC型肝炎ウイルスはない。抗原陰性。

・ 慢性肝炎
感染後、急性肝炎をへて、肝臓の炎症が持続するもの。
C型肝炎ウイルス感染者の大部分は慢性肝炎となる。
20年で肝硬変に、30年で肝臓癌へと進行するといわれる。

無症候性キャリア
C型肝炎ウイルスに感染しているが肝機能は正常。症状なし。
感染しても病院は隠すことができるといえます。
治療法を下記に挙げます。

インターフェロン療法 
ウイルスの排除を目的とするが貧血などの副作用も強い。
感染初期、ウイルス量の低いときに行うと効果が高い。
1990年代、インターフェロンによるウイルス排除率は10%代でした。

肝庇護療法
強ミノなどで炎症を抑える。高齢、症状が進んでしまっている人の対処療法。

瀉血療法
肝炎の知り合いのおやじは一生懸命レバーを食っていたのだが。。
鉄分は活性酸素やらとからんで肝炎を悪化させるそうです。
瀉血は貧血状態にして、余分な鉄分をすて、肝臓の炎症を抑える治療です。

インターフェロンフリー治療
2014年から始まった内服のみの治療法でウイルス排除率は95%まで高まりました。
C型肝炎に感染した透析患者さんの生命予後は非感染透析患者さんよりも悪く、
透析を受けていても積極的に治療を受けることが勧められています。

B型肝炎

B型肝炎は日本では150万人の感染者がいるといわれています。
感染力は強く、透析室内で注意しなければならない感染症です。
昭和60年代まで行われた集団予防接種による注射器の使いまわし、
輸血、垂直感染(母子感染)によって蔓延しました。

集団接種のように子供の頃に感染するとB型肝炎はキャリアとなりやすいのです。
成人になってから感染した場合、7割から8割は肝炎にはならず、治癒します。
残りは急性肝炎を発症し、多くは3週間ほどの入院、絶対安静で治癒します。
しかし、急性肝炎のうち1%から2%は劇症肝炎を発症し、
そのうち7割から8割が死亡します。

透析患者のように免疫機能が低下している状況では、
肝炎を発症せず、キャリアとなることがあります。
キャリアの9割は無症候性キャリアですが
1割が慢性肝炎となり、肝硬変、肝臓癌へと進行する危険性があります。

B型肝炎はC型肝炎より劇症肝炎になりやすく、感染力も強いため
米国疾病予防管理センターはB型肝炎の透析患者は隔離すべきとしています。
個室が準備できるのであれば、個室での透析を行います。
個室がなければB型肝炎陽性患者の透析機器は専用とし、
隣り合うベッドにはB型肝炎抗体陽性患者さんで取り囲みます。
血圧計、ベッド、シーツ、体温計、聴診器、駆血帯、コンソールなどの
ノンクリティカル用品であっても、
B型肝炎患者との医療用品の共用は避けなければなりません。

目に見えない量の血液汚染でも感染源となる可能性があり、
乾燥していても感染源となり、室温の環境表面にて
B型肝炎ウイルスは7日間も生き続けることができます。

B型肝炎ウイルスには遺伝子型によって8つの種類があり、
集団予防接種で蔓延した日本に多いジェノタイプCのB型肝炎ウイルスは
感染後、治癒することが多く、キャリアとなることはまれでした。

現在、性感染症として増加しているジェノタイプAのウイルスは
成人後感染すると10%がキャリア化し、
他者への感染につながるため警戒されています。
肝炎は糞口感染、大便が口に取り込まれると感染します。
若くして肝炎で亡くなった、肝炎で入院した芸能人のニュースがたびたび流れますが、
性的活動の活発な人が犠牲となっているのです。

針刺し事故における感染率は、HIVで0.3%、C型肝炎は3%、B型肝炎は30%といわれています。
医療従事者は実習前の段階からB型肝炎ワクチンの接種が望ましいとされています。
労働安全衛生法ではB型肝炎ワクチンの接種は義務とされており、
これら医療環境の整備により医療従事者のB型肝炎の職業感染は現在ほとんど起きていません。

医療機関の中には職員に対してB型肝炎ワクチンの接種を行わなかったり、
接種費用の一部自己負担を求める施設があり、問題となっています。
厚生労働科学研究では1996年から1999年の間、
C型肝炎陽性患者に使用した針にて医療従事者がリキャップ等により
誤って受傷した針刺し事故は7708件、感染が28件とのデータがあります。

C型肝炎に感染し労災認定された医療従事者は平成5年から7年間で
医師39名、看護師307名、その他38名。これはごく一部でしょう。
医療従事者は2人に1人が年に一回針刺し事故を起こすといわれています。
ちなみに管理人は年に1回さしている方です。

透析室での肝炎対策について詳しくは
「透析施設における標準的な透析操作と 感染予防に関するガイドライン」を
検索してください。このガイドラインは感染事故の起きた病院の後ろ向き研究ですので、
根拠に基づいたガイドラインであるわけですが、

簡単にまとめると、ベット間隔は離せ、透析開始、終了は
医療従事者二人で操作しろ。肝炎患者に使う物品は専用としろ。
ベッドは肝炎患者は固定しろ。肝炎患者は肝炎抗体陽性の患者で取り囲め、
B肝患者は個室としろ。といった感じです。

透析開始、終了は医療従事者二人で操作しろ。ということは一人操作、
穿刺といった観血的操作とコンソールの操作を同時に行うことによって、
コンソールを介した感染が起こっているということを示唆しています。
透析治療が肝炎感染者を増やしてきた歴史を踏まえたものとなっています。

新型コロナ肺炎

B型肝炎、C型肝炎が血液感染であるのに対し、コロナは接触感染、飛沫感染です。
感染力が強く、症状が現れるまで最大2週間の潜伏期間があり、
無症状、軽症患者が多い一方、高齢者、透析患者では重症化します。
対処療法が中心で特別な治療法はありません。

韓国、イタリアのように急速な感染拡大がないことから
検査数が少なく、検査による感染機会が少ないことも
影響しているのかもしれません。
PCR検査を行い、陽性でも陰性でも対処療法を行うことに変わりありません。

基本的にはインフルエンザ患者さんへの対応と変わりありませんが
症状のある時には透析施設への連絡を行い、集団送迎は利用できません。
院内では接触感染、飛沫感染の対応を強化します。マスク着用、
接触部位の消毒、個室利用の透析、個人保護具PPEの使用、
肝炎に準じた感染予防策、中水準消毒を行います。


院内感染報道集

1987年、三重大学医学部付属病院小児科に勤務する25歳の女性研修医、
28歳男性医師、35歳女性看護師がB型肝炎に感染し、研修医と男性医師が死亡、
看護師が重症となった。感染源は患者。
この事故から9日後にも福岡大学病院で同種の事故が起き、
医師2名が感染して死亡している。

2003年8月人工透析を受けている複数の患者からB型肝炎ウイルスの陽性反応が
確認された問題で、阿蘇温泉病院は今月上旬の定期検査で人工透析患者49人の
うち5人にB型肝炎ウイルスの陽性反応が出た。
このため、さらに精度の高い検査を行ったところ、新たに7人がB型肝炎の陽性を示した。
また今年6月にほかの病院に転院した患者一人も陽性であることが分かったという。
同病院はこれ以上透析を続けることは危険と判断したとして同病院での透析を自粛。
患者の転院先を確保することにしている。院長は患者に対して本当に申し訳ないと思うと謝罪。
早急に原因を究明するとともに、感染していない患者へのワクチン投与を急ぎたいとした。

宮崎市保健所は2005年2月8日、市内の病院で血液透析治療を受けている患者5人が
C型肝炎に感染したと発表した。 病院によると、透析患者44人のうち4人が2日、
体のかゆみやけん怠感を訴えたため、全員に肝機能検査をしたところ、
12人が正常値を超える高い値を示した。このため全員に肝炎ウイルス検査をし、
7日までに5人からC型肝炎ウイルスを検出した。 この5人を含む7人が入院している。

2006年9月20日京都市山科区の洛和会音羽病院で8月、
人工透析を受けていた50代から70代の外来患者8人が、
同じ時期にB型肝炎ウイルスに感染、うち5人が肝炎治療で入院していることが分かった。

平成6年、東京・新宿の西新宿診療所で劇症肝炎の集団感染が起き、
人工透析を受けていた慢性腎不全患者5人がB型肝炎ウイルスに集団感染し、
4人が劇症肝炎で死亡していた。東京都の劇症肝炎調査班は
「感染源は同じ時間帯に透析を受けていたB型肝炎のキャリアー患者で、
透析時の採血などの行為によって、ウイルスが体内に入った可能性が考えられる」としたが、
実際の感染経路は不明だった。注射器の使い捨ても守られていたので
感染の証拠がつかめなかった。調査班は同診療所に感染予防の徹底を指示した。

☆殿堂入り☆彡

1999年5月、兵庫県加古川市の福原泌尿器科医院にて
患者7人が相次いでB型肝炎を発症、うち6人が劇症肝炎などで死亡した。
院内感染調査委員会は、患者の透析時刻などの記録がなく感染経路の「究明は困難」とした。
その後の調査で同医院の人工透析患者の80%がC型肝炎ウイルスに
感染していたことが明らかになった。
これは全国の透析患者のC型ウイルス肝炎罹患率の4倍以上の異常な感染率で、
調査委は「同医院では日常的にウイルス感染の危険にさらされていたことを
強く示唆していると指摘。

同医院の透析患者123人のうち、B型と同様に血液を介して感染する
C型肝炎の感染者が98人に上っていた。
院長は「事実を厳粛に重く受け止め、院長職の辞退を考えている。
早急に新体制に移行する予定だ」とのコメント出している。

HIVに関しては現在は医療従事者への感染は封じ込められています。
2000年以降、事故後に抗ウイルス薬を3錠服用する暴露後予防措置が普及し、
医療従事者への感染はなくなっています。
また、先進国では透析室での他の患者さんへの感染も起こっていません。