DW、心機能の評価

心臓から血液中へのhAMP、BNP、NT-proBNPの放出は、
DWが高すぎて体内の水分が多く、心臓の壁を引き伸ばしている等、
血圧や血液量の増加による心臓壁のストレスにより引き起こされます。

NT-proBNPは2007年から測定可能となった比較的新しい検査項目です。
BNPより採血後、安定しているので測定誤差の小さい指標です。
検査センターに出すのが遅くなる午後透析の患者さんなどでは
BNPより、NT-proBNPが適しています。
hAMPは除水に伴って変動しますのでDWの評価ならhAMP。
心機能評価ならBNPの採血が行われます。

hANP

hAMP ヒト心房性利尿ペプタイド
(Human atrial natriuretic peptide)
 
分泌:心房(体液量の増加による刺激をうけ分泌される)
作用:利尿(バソプレシンに拮抗)、降圧(レニンに拮抗)、飲水の抑制

ドライウェイトが適切かどうか判断するのに採血検査されます。
透析中の除水に伴い速やかに低下するためです。

基準値:50pg/ml (透析後) 。
採血結果が50pg/mlぐらいだと適切なDWだと判断されます。

注意値  
透析後採血 100以上 DW 下げる!
       25以下 DW 上げる!

透析前には150pg/mlぐらい(増加量によって異なる)
心疾患があればhAMPの数値は高くなります。
心疾患がなく、高血圧がないときにドライウェイト評価として利用される。
透析後と透析前では除水の影響を受け、数値が異なるので注意!
ドライウェイトが適切かどうかを判断したいために採血するのに
透析前での採血ではその日の体重増加が
心臓にかけてる負担を評価してるにすぎません。評価したい体重で採血しましょう。

ドライウェイトが正しいのか、迷う患者さんは少なくありません。
透析前半でショックを起こし、次の日には平気で引けてしまう人。
5キロ増えなのに透析前から血圧が低い、
血圧は高くないのに肺水腫をたびたび起こし緊急透析を要する人などなど。

適切なドライウェイトつまり、体の適切な水分量である体重は60キロといった、
一定の数値ではありません。透析後、ドライちょうどで終了し、トイレに行き、
排泄後に体重が1キロ近く減ることもあります。
健常者でも朝と夜では1キロ以上の体重の変動があります。
透析患者さんの中にはなぜかDWに対し誤った考えに固執し、
透析後には週初めでもDWでなければならない、
残ってしまってはダメなんだと罪悪感を抱く人が少なくありません。

心胸比も60%の人がいれば、30%の人もいます。
長時間透析を行っている患者さんは体重が増減しても
浮腫みもなく、心胸比も変わらないこともあります。
hANPはドライウェイトが適切か評価する指標ですが、
DWは臨床での症状、患者さんの状態など総合的に判断されるべきであって
hANPだけ頼りはよくありません。

BNP


BNP 脳性利尿ペプタイド
(Brain natriuretic peptide)

分泌:体液量の増加による刺激をうけ、心室から分泌される。
当初、脳、Brainから発見されたためこの名前が付く。
作用:利尿(バソプレシンに拮抗)、降圧(レニンに拮抗)、飲水の抑制

透析中の除水によって低下するが変化は小さいため
ドライウェイトの判断には使われず心疾患の進行度を調べるのに有用。
(BNP濃度はNYHA分類に相関します)

NYHA分類とはニューヨーク心臓協会が
心臓病の深刻度を簡単でわかりやすいⅠ度~Ⅳ度に分類したものです。
ニーハ分類と読みます。
透析暦20年の患者さんでたまに胸部症状がある。。なんて人を
測定してみるとBNPが800pg/dlぐらいあってびっくりしたことがあります。

NYHA分類
  
NYHA I度 ・・・・・BNP20pg/ml~50pg/mll
心疾患はあるが症状はない、直ちに治療を必要とする状況ではない。
BNPの基準値、正常値は20pg/ml以下です。

NYHA II度 ・・・・・BNP50pg/ml~100pg/mll
安静時は症状がないが活動時に症状があるもの。重症ではないが心臓の精査、
心エコーや心電図検査を定期的に行いましょう。

NYHA III度  ・・・・・BNP100pg/ml~200pg/mll
安静時は症状がないが活動時には強く症状が出て日常生活が厳しく制限される。

NYHA IV度 ・・・・・BNP200pg/ml~300pg/mll
軽度の活動でも症状が出て安静時でも心疾患発作の危険性がある。
NYHA分類に相関するためBNPは心機能の評価に用いられるのです。

NT-proBNP

ヒト脳性ナトリウム利尿ペプタイド前駆体N端フラグメント

分泌:心筋から分泌されるホルモン。BNPと同モル量、分泌されているが半減期が長く、
採血後でも安定しており半減期が長く、採血後すぐに測定できないときなどに便利。
BNPよりも測定誤差が少ない。

作用:利尿(バソプレシンに拮抗)、降圧(レニンに拮抗)、飲水の抑制
(NT-proBNP濃度はBNPに相関する) BNPの約6倍がNT-proBNP

NT-proBNPはBNP同様、心不全の重症度を調べるために検査されます。
救急の現場でよく利用されます。呼吸不全の患者さんが運ばれてきた、
その時に、心臓を原因とした呼吸不全であるのか、臨床症状から診断するよりも、
NT-proBNPの数値により判断する方が正確であるとの報告があります。

心不全なのか、その数値カットオフ値は300pg/ml、
カットオフ値が300以下なら呼吸不全は心臓を原因としている可能性は低い。
他の原因を探そうと次の行動に素早く移れるわけです。

カットオフ値 300pg/ml 以上はニーハ分類、3度に相当します。
NYHA III度=安静時は症状がないが活動時には強く症状が出て
日常生活が厳しく制限される。NYHA III度に相当するNT-proBNP濃度は
300~900pg/ml です。(50歳から75歳)

このように救急で心不全の診断に利用されるだけでなく、
NT-proBNPは心不全の予後の予測、心不全の治療の指針としても利用されます。
治療が効果を発揮しているか、元気になったけど退院できるのかを判断します。
数値がどう変化していくかが重要なわけです。
ニーハ分類4度に相当するNT-proBNPの濃度は年齢によって分類されています。
年を取れば心臓がダメージを受け、高めに出るのは当然なのです。

透析の患者さんの3分の1は心臓の病気で亡くなります。
心不全は透析患者さんの死因の一位であり、
25才~35才の透析患者の血管疾患による死亡率は
一般人85才の血管疾患による死亡率と同じです。
透析を受けていると心電図検査は月に一回、
心エコーも年に1回行うのが一般的です。検査漬けとなりますし、
心臓は加齢とともに悪くなりますので、検査を拒否した患者さんもいました。
ムンテラのたびに悪い説明をされるのが嫌だというのです。

年を取ってしまえば仕方ないのかもしれませんが、治療ができ、
生活習慣の改善など、よくなれる時点で病気を見つけることができ、
治療の成果を判断するのが検査の目的なのです。