イオン化カルシウム

透析患者の血清カルシウム濃度基準値は8.4mg/dl~10.0mg/dlです。
健常者の血清カルシウム基準値は基準値は8.6mg/dl~10.2mg/dlです。
健常者より若干低く、また、透析患者の基準範囲内でも
低めにコントロールするのがよいとされています。

低カルシウムでは筋痙攣、つり、神経症状、不整脈など、
高カルシウムでは血管の石灰化や動脈硬化の原因となります。
血液検査で測る血清カルシウム濃度は血清中の総カルシウム濃度を測定しています。

総カルシウム濃度の約50%がイオン化カルシウム、
約40%がアルブミンと結合しています。
透析の患者さんは食事制限や透析による喪失、
また高齢者は食事量が少ないためアルブミンが低値となることがあります。
アルブミンが減ることによって結合型カルシウムが減り、
見かけ上、低カルシウム血症と判断されることがありますが、
生理的作用を持つのはイオン化カルシウムです。
イオン化カルシウムの値が正常であれば
見かけ上の低カルシウムを心配する必要はありません。

低アルブミンである時はアルブミン補正をする必要があります。
補正Ca値=実測Ca値(mg/dl)+(4.0 - 実測アルブミン値)
補正による値はアルブミンが正常値である4.0mg/dlあると仮定するのです。

これは補正値です。イオン化カルシウムを直接測定することもあります。
イオン化カルシウムの基準値は2.2mEq/l~2.5mEq/lです。

市販の透析液のカルシウム濃度は3.0mEq/l、2.75mEq/l、2.5mEq/lですが
現在、3.0mEq/lの透析液の使用が施設の過半数です。
2.5mEq/lの透析液を使った場合、
上記のイオン化カルシウム濃度が基準値のレンジにある患者さんは
透析後カルシウム濃度が上がりそうですが、実際は多くが低下します。

要因としてまず、除水による除去があります。
それから透析によってアシドーシスが補正され、
血液中のphが高くなる、アルカリ化されることによって
アルブミンに結合するカルシウムの割合が増え、
透析されるイオン化カルシウムの割合が減ることが挙げられます。
平均して一回の透析あたり約100mgのカルシウムが除去されるといわれています。

ビタミンD剤
                     
腎機能が正常であるとカルシウム濃度の恒常性は保たれています。
カルシウム濃度が低下すると副甲状腺はそれを感知し、PTHを分泌します。
PTHの作用により腎臓からはビタミンDが放出され、
腎臓は尿からのカルシウムの排泄量を少なくします。
ビタミンDは腸管にも作用し、カルシウムの吸収量を増やします。
PTHは破骨細胞に働きかけ、骨を吸収、血液中にカルシウムを動員します。

腎機能が失われるとカルシウム濃度の恒常性が失われます。
カルシウム濃度が低下すると副甲状腺はそれを感知し、PTHを分泌します。
その作用により放出されるはずのビタミンDは腎不全により不足します。
腸管からのカルシウム吸収が少なくなり、貯蔵庫である
骨からのカルシウム頼りになり、骨折しやすくなります。(線維性骨炎)
尿が出ないためリンが体内に蓄積されていきます。
カルシウムとリンの積は一定になるように体内で調整されるため、
高リンはますます低カルシウムとなります。
低カルシウム、高リンは副甲状腺を刺激、
PTHの分泌は増えつづけますが、低カルシウムは持続します。

ビタミンDはPTHを抑えるだけではなく
抗炎症作用など様々な作用をもちます。
透析患者さんにはPTHを基準範囲内に下げるために用いられます。

アルファカルシドール(アルファロール)は体内で代謝されて作用する
プロドラッグでなだらかな作用が特徴です。
カルシトリオール(ロカルトロール)は直接作用を発揮する活性型ビタミンD剤で
高い血中ピークをもちます。この2剤の適用は
慢性腎不全におけるビタミンD代謝異常に伴う諸症状
(低カルシウム血症、テタニー、骨痛、骨病変等)の改善であり、
経口薬のファレカルシトリオール(ホーネル)、
静注薬のマキサカルシトール(オキサロール)の適用は
維持透析下の二次性副甲状腺機能亢進症となっています。
副作用であるカルシウム、リンの上昇も生じにくいとされ、
静注薬は一過性に血中カルシウム濃度を上げることで、
従来の経口パルス療法よりもPTHを強く抑制します。 

ビタミンD、カルシウムにより副甲状腺のPTH分泌にブレーキがかかります。
ビタミンDはPTHを抑制するために使用されますが
カルシウム、リンを上昇させる副作用があり、
PTHよりもカルシウム、カルシウムよりもリンのコントロールが優先されます。

リン

Caの含まれていないリン吸着剤も数種類ありますが炭カルとくらべ、
腹部症状・便秘、下痢などの副作用があり、継続して服用できない患者さんもいます。

低回転骨の場合、骨のカルシウム調整機能が低下しているため
少量のビタミンD剤であっても容易に高カルシウム血症をきたします。
かといってビタミンD剤を中止すればPTHが上がり
これもまた高カルシウム血症の原因となります。

薬を使いたくても使えない、副甲状腺治療の最大の原因がリンです。
高リン血症となると副甲状腺は増殖し、
ビタミンD、カルシウムによるブレーキを感知しにくくなります。
リンは副甲状腺の量的変化、質的変化を起こし、
PTHの分泌増加に歯止めのかからない状態となるのです。

2000年代に入り、カルシウムを含まないリン吸着剤や、
カルシウム受容体作動薬(レグパラ)が発売されました。
カルシウムが高くて副甲状腺機能を抑制する薬が使えない人も
カルシウム受容体作動薬は副甲状腺にカルシウムが負荷されたと勘違いさせるのです。

静脈注射剤のカルシウム受動態作動薬(パーサビブ)も
同様にカルシウム受容体に作用することによって、PTHの過剰な分泌を抑制し、
血中のリン値およびカルシウム値を低下させます。
透析患者さんは大量の薬を飲んでおり、服薬コンプライアンスが悪いので
透析後に回路から投与できるというのはとても有用な薬です。